没落亭日誌

科学史/メディア論のリサーチ・ダイアリー

25 Sep 2019: Guy, 1843, Employments and Health 2

  • Guy 1843"Further Contributions to a Knowledge of the Influence of Employments upon Health"を読んだ。
  • そのあと、GuyのHoward神話をまとめたWinter's Journeyの最初の方を再訪。

Guy 1843, Employments and Health 2

  • 書誌情報: William Augustus Guy, 1843, "Further Contributions to a Knowledge of the Influence of Employments upon Health", JSSL, Vol. 6, No. 4, pp. 283-304.
  • やはり病院に来院した人のデータしかなく、そこでの年齢構成から逆算してもとの職業集団の健康に及ぼす影響について語ろうとしているが、これはかなり難しそう。根本的に、もとの職業集団が人口全体に占める比率、もとの職業集団の年齢構成などがわからないので、職業ごとの疾病率などを計算できない。Guyもそのことに気づいている。たとえば、患者の中からあるタイプの職業集団(indoor/outdoor)に属する者の年齢構成を出して、若年層が多いことを発見したとしても、それはある職業が特に身体が強い若年層に病気を引き起こすほど不健康であることを証明せず、単にもともとの職業集団に若い人が多いだけかもしれないと述べている。
  • ここでは身体的に辛い労働のほうが引退が早く、若年層の占める割合が高いことが仮定され、また若年層の占める割合はどの職業でも一定であることが仮定されているように思える。こうした困難を克服するために、compositorとpressmanという似通った職業を抽出するという戦略がとられる。
  • 以前に出された論文と重複がかなり多いのが特徴。続き物としての論文。
  • 結論とそれを示す表だけが示されるのではなく、そこに至るまでの推論の過程がわりと長々と書かれている印象。これはかなり特徴的なライティングスタイル。
  • pp. 296-297の間に手書きと思われる折れ線グラフがある。これは数字で表れたデータのvisualisationであり、かなり重要。
  • dataの不完全さについて、分析者自身がreadilyに認める。だが、そうした不完全なdataであったとしても、approximationとして価値があるのだという議論が続く。このapproximationの価値というのは科学史的には興味深いトピックである。   
  • 原因について複合的なものであるという理解。こうした複合的な要因を解きほぐす必要から比較などの操作が必要とされているという流れだと考えられる。straightforwardな原因=>結果との差異化。
  • 結論がわりと平凡でオリジナルでないのだが、そのことにGuyは気づいており、それにもかかわらず自らの仕事を擁護しようとしている。ここで召喚されるのは新奇性ではなく、新しいデータを利用することで独立に従来の見解を確かめたという知見を確実なものにするという側面。
  • 全体として比較の操作の中で何が行われているのかよくわからないので、再訪の必要がある。