没落亭日誌

科学史/メディア論のリサーチ・ダイアリー

11 Sep 2019: Guy "Contributions to a Knowledge of the Influence of Employments upon Health"(1843), "Dr Guy's Defence" (1845)

  • 1845年に起こったGuyのPrinciples of Forensic Medicineplagiarism騒動をめぐる記事を読んだ。
  • その後、Guyのemployments upon healthシリーズ第一作。
    • この論文は病院への訪問者からいろいろ逆算して計算しているが、その過程でわりと奇妙なことになっている印象がある。

1845, London Medical Gazette

  • 書誌情報:[anonymous] (1845)"[book review]Principles of Forensic Medicine", The London Medical Gazette, vol. 1, pp. 227-229. / William Guy (1845) "Dr. Guy's Defence", The London Medical Gazette, vol. 1, pp. 298-302.
  • GuyのPrinciples of Forensic MedicineはTaylorのMAnual of Medical Prudenceのplagiarismだという主張。この中で、GuyのWriting style=commonplace bookが言及されている。
  • それに対するGuyのdefence。基本的に参考にしたのはDr Christisonの著作であり、これは引用しているという主張。
  • だれを引用するべきかという問題についても触れており興味深い。ここでは特に事実の第一発見者か、それをまとめたひとかが問題となっている。。Guyは複数の事実をまとめた人を引用するとしている。これはGuyによるデータ整理への情熱を考えると重要かもしれない。
    • Accordingly I have quoted several cases, with due acknowledgment, and that I might display my obligation to the full, have given him the credit of bringing together several cases to which without much loss of time I might have referred. As such a course might have laid me under the imputation of making an undue use or another's labours, I have preferred in this, as in many other instances, to quote the author who first made such cases our own. (p. 301)

Guy, 1843, Employment and Health 1

  • 書誌情報:William Augustus Guy, 1843, "Contributions to a Knowledge of the Influence of Employments upon Health", JSSL, Vol. 6, No. 3, pp. 197-211
  • King's College Hospitalのout-patient registersを利用して、healthへのemploymentの影響をみる。
  • データとなるKing's College Hospitalのout-patient registersが使えるようになったのは1842年というのはデータの整備が行われたのではないか?この病院登録簿がどのようにして生産されたのかについて少し調べたらおもしろいかもしれない。SSLのHospital Committee(1840年設立、1842年レポート)の提言に従った可能性がある。
  • 全体の患者数のうち、それに占めるPulmonary Consumptionの比率を計算するという手法。なぜ、この手法がとられたのかはよくわからない。ともあれ、空気の問題に関心が持たれていたのは確か。
  • 分析と分析結果の書き方として、結論だけじゃなくわりと探索過程なども論文に書くというのが特徴的。後ろに行くほど関連するとされる変数が増え、それがどんどん追加されていくので、はじめから書いててくれればもっと楽なのにという印象をうける。これは仮説が曖昧だからというものもあるかもしれない。結局、性別に加えてindoor/outdoorという換気の問題系と、運動量、そして年齢という3変数が重要になる。
  • ほかにも姿勢、高温、湿気、ダストなどの変数がアドホックに検証され、全体的なストーリーというものがないようなだらだら報告書文体。このだらだら文体は当時の統計学にとって重要な文体だったと思うのだが、これを示すにはどうしたらいいか。
  • 全体の患者数は3,000をこえているが、職種と婚姻状態でわけてしまうとクロス表の中のセルの中の数が小さくなってしまうという問題に度々直面している。
  • データが病院に来た人しか存在せず、それぞれの職業グループのもともとのサイズもそこでも年齢分布の情報もないまま推論をおこなわないといけないので、進め方がわりと独特で読みづらい。
  • 分析結果において奇妙な分数が使われているため大変読みにくい(1/22はいいのだが、1/13.63などはいみがよくわからない。しかも、実際の表記は1・13・63)。この表記は興味深い。
  • 発症時期の話をしているが、これはどういうデータを使っているのかがよくわからない。
  • アブストラクトがないので、結果のまとめは最後に箇条書きで書かれる。このまとめを箇条書きで書くスタイルはわりと興味深い。