没落亭日誌

科学史/メディア論のリサーチ・ダイアリー

15 Oct 2019: Inkpen (2018) "The Scientific Life in the Alpine"

  • 論文執筆のための準備作業として、科学史論文を読む。次の研究プロジェクトではsocial sciencesにおけるfield workの歴史を扱いたいので、「field」科学を対象にしたもの。
    • Danielle K. Inkpen (2018) "The Scientific Life in the Alpine: Recreation and Moral Life in the Field", Isis, pp. 515-537.
    • 題材はMiller-Beckey disputeとよばれる、1940年代にJuneau Icefiledで起こった登山家と科学者登山家の間での衝突。
    • Field scienceに特に興味がない人間には論文自体がどこまでおもしろいのかわからないが、field scienceとscientific lifeという組み合わせはあまり見たことがなかったので、両方共に興味があるわたしにはおもしろかった。
    • fieldのおもしろいところは、科学者以外の異なる種類のアクターがいるというheterogeneityと、そこにおける科学者と非科学者との交渉場面。
    • 今回の事例で、論文の売りはfieldにすでにある秩序へと科学者が侵入し、現地の秩序へと適合/横領していくという図式ではなく、科学者/登山家というすでに二重性を抱えた科学者自身が、双方の倫理的価値を巧みに生きていくという感じだろうか。
    • 個人的によりおもしろかったのは登山家/科学者であるMillerの科学的権威に挑戦したBeckeyに対して、Millerがむしろ自らを登山家として示し、そしてBekceyの登山家にふさわしくない振る舞いを攻撃するというもの。科学者であるということは、つねに科学者として立ち現れるというものではない、というアイディンティと状況に置けるrelvanceを描いたみたいな話。これ、当たり前の話に見えるが、field scienceにおいてはおそらくかなり重要なはなし。scientistであることが常に優先されるとは限らない。
    • When his scientific credibility was questioned, he drew on mountaineering ethics and his identification as a mountaineer—the very condition of the criticisms launched against him—to address the charges. He was able to do so because, in the field, the values of respecting priority claims and epistemic transparency operated syncretically between the historically entangled worlds of mountaineering and science. He could have invoked the authority of science, but the field is home to many callings, and science does not always trump other elite groups, even in the twentieth century. (p. 535)

    • 論文の書き方、先行研究でやたら羅列するスタイル、イントロの書き方など、アメリカの社会学者のような書き方。これ、歴史家相手にやって読みにくいと注意されたことがあるのだが、別にこういうのでもいいのか。難しいな。
    • 著者の経歴を見たところ、philosophy→HPS系なのでなぜこういう書き方なのかよくわからない。philosophyのひともこういう書き方なのだろうか。
  • Guy(?)によるEvils of Englandの読解続き。
    • prisonの話になってもまったく関係なさそうだったので、読むのを辞めることにする。
  • 仮想敵であるRoy PorterによるHoward神話批判を再訪したほうがよいので文献情報をメモ。
    • Roy Porter ‘Howard’s Beginning: Prison, Disease, Hygiene’, in The Health of Prisoners: Historical Essays, ed. Richard Creese and Richard Creese William F. Bynum J. Bearn (Rodopi, 1995),
  • 翻訳の仕事を引き受けた。思ったより急いでやった方がよさそう。
  • 翻訳を少し始めてみる。ゴルジ染色の話が冒頭に出てきたので、ちょっとこれは詳しい人に聞いた方がいいだろう。